1878年~1942年の株価指数完成報告会(FIWAマンスリー・セミナー)

2021年10月17日のFIWAマンスリー・セミナーは明治大学株価指数研究所による1878年から1942年までの株価指数が完成したのでその発表会をさせていただきました。セミナーに先立っての私の挨拶をご紹介しておきます。セミナーは以下の三つの講演と質疑応答が行われました。ご興味のある方は動画(有料)を視聴していただくことが可能です。STORESまでどうぞ。

「日本株式市場全史(戦前編)」(岡本 和久)

「株価指数研究所 -2016年からの軌跡-」(三和 裕美子氏)

「株価指数研究所の研究成果~戦前期を対象とした株価指数の算出と日米比較~」(太田 達也氏)

「フリー・ディスカッション、質疑応答」(三和 裕美子氏、太田 達也氏、岡本 和久)

以下、ご挨拶文です。

2016年に設立させていただいた明治大学株価指数研究所は、1年に東京株式取引所が設立されて以来、今日に至る一環した株価指数の作成に着手してきました。三和裕美子教授の指導のもと、太田達也君をリーダーとして多くの学生諸君の協力を得て、ここに1878年から1942年までの株価指数が完成しました。その成果を発表をさせていただきたいと思います。

米国などでは100年以上にわたる株価指数の作成・研究が行われており、そのような基礎的な研究により長期に投資をすることが株式投資の基本であると言う考え方が広まったと言われます。CRSPの研究、ジェレミー・シーゲルの著書などが有名です。

私は常々なぜ日本では株式取引が行われていたにもかかわらず、今日の指数と一貫した戦前の株価指数が存在しないのかと疑問を感じていました。日本では株価指数の研究が戦後の歴史に限定されてしまっているのです。今日、発表させていただく研究成果はみんなが「無くて当然」と思っていた意識の壁を打ち破るものの一つであると考えます。

例えば、なぜ、株式取引所が設立された1878年当初、取引のほとんどが公債だったのか、日清・日露戦争の時の株式市場はどんな動きをしたのか、第一次大戦で日本が得たもの、失ったもの、関東大震災のときはどうだったか、そして、昭和になり統制経済下での株式市場はどのような動きをしたのか・・・。本来、とても貴重なマーケットに関する情報が埋もれていたのです。今回の研究はそのような出来事に光を当てる重要な出来事です。

日本の経済、社会も大きな転機を迎えている現在、現状を戦後という限定された視野で見るのではなく、戦前も含めた過去150余年(明治維新後)の視座で見ることがとても必要になっています。その点でいままで埋もれていたデータがこの研究で陽の目を見つつあることはとてもうれしいことです。同時に、この研究成果が日本の株式市場に対する人々の意識を大きく変えていくことを期待してやみません。

これは50年以上にわたってお世話になってきた証券市場への私のせめてもの恩返しです。そして、この趣旨にご賛同くださった三和先生のリーダーシップのもと、多大な時間と労力を費やしてくれた学生諸君にあつく御礼を申し上げます。

次のステップは1942年から終戦の1945年まで、そして終戦から1949年までの集団取引、さらに配当込TOPIXの不足するデータを補充して今日のTOPIXに連結する作業が残っています。これが完成すればまさに1878年から2021年までの143年間にわたる一気通貫の株価指数が完成します。これも近いうちにみなさんに発表できると思います。